夏場の咳について
夏に多くなる咳について
近年、日本の夏は年々暑くなっており、猛暑日や熱帯夜が増加しています。そのため、エアコン無しで過ごす事は難しくなってきました。エアコンは熱中症対策としては非常に有用ですが、適切なケアを行わないと咳の原因となることがあります。また、夏場に飛散量が増える「イネ科花粉」も咳の原因となるため、注意が必要です。本記事では、夏に咳を引き起こしやすい原因とその対策について説明していきます。
夏場の咳の主な原因
エアコン
どのご家庭にもエアコンが必ずあると思いますが、これまで掃除をされたことはあるでしょうか?エアコンは、室内の空気を吸い込み温度を調整して再び部屋に戻すことで室内の冷暖房を行います。そのため、エアコンを一定期間使用していると、フィルターには室内に存在するハウスダスト(ほこり)が必ず付きます。ハウスダストにはペットの毛、ダニや虫の死骸、花粉など目には見えない様々なものが含まれています。また、長期間使用されたエアコン内部にはカビが生えている事も多く、きちんと掃除されていないエアコンを使用する事はハウスダストやカビを部屋にまき散らしてしまう事になりかねません。
これらはすべて、喘息(気管支喘息、咳喘息)による咳症状を悪化させたり、アレルギー性鼻炎・皮膚症状などの原因ともなるため、エアコンフィルターの定期的な掃除はとても重要です。
イネ科花粉
関西においては4月下旬から5月、8月上旬から10月上旬頃にかけて飛散量がピークを迎えます。特に、梅雨が明けて気温の高い日が続くと一気に飛散するため、夏場の咳症状や、鼻炎症状などの原因となります。夏場でもマスクを着用する、サングラスやゴーグルで目の保護をする、窓を開けた換気はなるべく行わないなどの対策が重要です。
夏の感染症
夏に流行しやすい感染症として、いわゆる「夏風邪」が有名です。これは手足口病やヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(プール熱)などのウイルス感染症であり基本的には特効薬はなく症状に応じた対症療法を行います。その他、近年は新型コロナウイルスやマイコプラズマなども夏場に流行しています。特に、喘息(気管支喘息、咳喘息)やCOPD/肺気腫をお持ちの方は感染症により咳症状や痰症状が悪化してしまうため、注意が必要です。
咳の原因に応じた治療の重要性について
夏場に咳を引き起こしやすい主な原因についてこれまで簡単に説明してきました。しかし、これはあくまで頻度の高い原因であり、その他にも肺がん、結核、心疾患、逆流性食道炎、薬剤性など原因は多岐にわたります。これらの原因を特定せずに漫然と咳止め薬や風邪薬による対症療法を行う事は、背景に潜む重大な病気を見逃す可能性があるため非常に危険です。原因を特定するためには、胸部レントゲン検査や肺機能検査、呼気一酸化窒素測定検査、血液検査など様々な検査を組み合わせる必要があります。また、それぞれの検査結果の解釈は呼吸器科専門医でないと分からない事もあるため、専門医による適切な診療を受けて頂く事をお勧めします。
適切な治療を受けられているか見直してみましょう
処方された薬がどういう目的で使われているか、理解したうえで使用されているでしょうか?「よく分からないけどいつも処方されるから」、「余っていたから使ってみよう」など、何となく薬を使っている事はないでしょうか?
これは咳の治療に限りませんが、処方された薬の目的を理解したうえで服用する事は非常に重要です。近年、「ポリファーマシー(polypharmacy)」が問題となっています。これは、必要以上に多くの薬を服用しているため、副作用のリスク増加や医療費増大など様々な問題を引き起こします。
当院では、症状に応じた必要十分でなるべくシンプルな治療薬の処方を心がけています。特に、喘息の治療は状態に応じて薬を変える必要があるため、症状に変化が起きた場合にはなるべく早めに受診するよう心がけてください。
咳を放置する事による生活への影響
様々な研究結果(1)から、咳による生活の質の低下が問題となってきています。具体的には、咳による睡眠の妨げ、胸痛・肋骨骨折、咳による尿漏れ、咳が原因の頭痛など、咳の日常生活への影響は多岐にわたります。また、新型コロナウイルスの流行以降、職場や学校で咳をしていると、「周りの人から感染者として見られてしまう」などの精神的な負担から、うつ症状を引き起こしたり、咳による欠席・欠勤などの社会的な活動制限を引き起こす事もあります。
このように、咳症状が続くことにより日常生活が多く制限されてしまう可能性があるため、咳でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
まとめ
咳を引き起こす原因は多彩で、その原因に応じた適切な治療を行う事は非常に重要です。また、咳が緩和される事により体が楽になるだけでなく、日常生活や心理面へ良い影響を及ぼす事が期待されます。
当院では、咳症状で悩んでいる患者様の症状をなるべく早く緩和できるよう、常に最新の知見を取り入れ、科学的根拠(エビデンス)に基づいた診療を心がけております。
咳でお困りの患者様や内服薬の相談など、気になる事がありましたらお気軽にご相談ください。
(1)Am J Med.2020;133:544-51.


