アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎とは
発作的で連発するくしゃみ、さらっとした鼻水、鼻づまりの3つが主な症状のアレルギー性疾患です。空気中に存在するアレルギー物質(アレルゲンといいます)が原因であり、アレルゲンが鼻の粘膜から体内に入ることにより、上記のような症状を引き起こします。
アレルギー性鼻炎の分類について
アレルギー性鼻炎には、毎年同じ時期に起こる「季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)」と1年を通して症状がでる「通年性アレルギー性鼻炎」があります。
季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)のほとんどは花粉(スギ、ヒノキ、イネ科、ブタクサ、ヨモギなど)が原因であり、通年性アレルギー性鼻炎の多くはハウスダスト・ダニ・カビ・ペットが原因です。
アレルギー性鼻炎の症状
くしゃみ、鼻水、鼻づまりが最も有名ですが、咳、だるさ、イライラなどの症状を認める事もあります。花粉症ではアレルギー性結膜炎を併発する事が多く、眼のかゆみや涙目などの症状を認めます。
アレルギー性鼻炎と気管支喘息の関連性
下の図に示す通り、気道(空気の通り道)は鼻・口の入り口から肺の中の気管支までつながっており、上気道と下気道に分かれています。鼻炎と喘息は、いずれも気道の炎症性疾患のため、密接に関連しています。
環境再生保全機構 ホームページより
アレルギー性鼻炎の方の20-40%は気管支喘息を合併し、気管支喘息の方の60-80%はアレルギー性鼻炎を合併すると報告されています(1)。喘息に鼻炎を合併していると喘息が悪化しやすいですが、アレルギー性鼻炎を適切に管理することで喘息症状が改善するため、両疾患を総合的に治療・管理する必要があります。
アレルギー性鼻炎の有病率
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 ホームページより
日本人のアレルギー性鼻炎の有病率はこの20年で著しく増加しています。上のグラフで示す通り、2019年の調査では日本人の約半数がアレルギー性鼻炎を発症していました。鼻炎症状がひどくなると、睡眠の質の低下、学業や仕事などのパフォーマンスの低下、集中力の低下やうつ症状など、様々な弊害をひきおこします(2)。そのため、なるべく早期に治療し、重症化させないことが重要です。
アレルギー性鼻炎の診断
問診により「くしゃみ・鼻水・鼻詰まり」などの典型的な症状や、鼻粘膜の腫れなどが認められた場合は、アレルギー性鼻炎と診断されます。原因となっているアレルゲンを特定するため、血液検査を組み合わせる事もあります。
アレルギー性鼻炎の治療
01. アレルゲンの除去と回避
アレルギー性鼻炎を引き起こすアレルゲンを除去・回避する事が鼻炎症状に対する治療の第一歩となります。以下のような事に気を付けながら、生活するようにしましょう。
室内のほこりやダニの除去
- 室内の湿度を60%以下に保つ
- 週に2回以上、掃除機による部屋の掃除を行う(掃除機は、1畳あたり30秒以上かけてゆっくり行う事が理想)
- 布張りのソファ、カーペットの使用を控える
- ふとん乾燥機を使用し、ダニの繁殖を防ぐ(週1-2回が理想)
スギ花粉の除去
- 花粉情報に注意する
- 飛散の多いときの外出を控える。外出時はマスク、メガネを使う
- 飛散の多いときは窓、戸を閉めておく(換気は24時間換気システムのみで行う事が理想)
- 洗濯物は部屋干しのみにする(部屋の湿度が上がりすぎないよう、時期によっては除湿器の使用を考慮)
- 表面がけばだった毛織物などのコートは使用しない
ペット
- できれば屋外で飼い、寝室には入れない
- ペットを清潔に保つ
- カーペットの使用を控え、フローリングのみにする
02. 薬物治療
アレルゲンの除去に加え、症状に応じて下記のような薬を併用します。
抗ヒスタミン薬
主に、くしゃみ、鼻水に効果があります。眠気などの副作用の少ない、第2世代といわれる薬を使用することが多いです。
ロイコトリエン受容体拮抗薬
鼻づまりに対する効果に優れ、くしゃみや鼻水にも有効とされています。
鼻噴霧用ステロイド薬(点鼻ステロイド薬)
くしゃみ、鼻水、鼻づまりの3症状に等しく効果があり、効果発現が1,2日程度と早いです。
舌下免疫療法
ダニやスギ花粉などが原因アレルゲンとして同定された場合に行います。鼻炎症状の改善や薬の減量効果があります。アレルギー性鼻炎に対する唯一の根本的な治療法です。
生物学的製剤
季節性アレルギー性鼻炎で、上記治療に対する効果不十分な場合、使用が検討されます。ゾレア(抗IgE抗体)が保険適応となっています。
手術療法
薬による治療でも症状が良くならない場合や鼻腔の形態異常がある場合に、症状改善目的で行う場合があります。
花粉症の初期療法について
例年強い花粉症症状を起こすかたには、花粉飛散開始予測日の1週間前や症状が少しでも出た時点から治療を行う「初期療法」が有効です。初期療法を行う事で、花粉飛散時期の鼻炎症状の軽減や、鼻炎症状の終了を早める効果があります。
まとめ
アレルギー性鼻炎は近年増加傾向であり、同じ気道のアレルギー疾患である気管支喘息と相互に影響しあっています。また、アレルギー性鼻炎の治療により喘息症状が改善するため、両者を同時に治療する事は非常に重要です。
鼻炎症状がある方は、あまり放置せずになるべく早めに受診するようにしましょう。
(1)Chest. 1997 Feb;111(2 Suppl):11S-16S.
(2)J Allergy Clin Immunol. 2007;120(2):381.