肺がん
肺がんとは
肺がんとは、肺に発生する悪性腫瘍の総称です。肺がんは1998年から日本人のがんによる死亡数の第1位で、2022年の年間死亡者数は7万6千人を超えています。
下のグラフに示す通り、日本人の肺がん死亡数や罹患数(肺がんと診断された人)はともに増加傾向です(がん情報サービスホームページより)。
肺がんの種類
大きく分けて、①非小細胞肺がん、②小細胞肺がんの2種類があります。非小細胞肺がんの中で、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどの肺がんに分けられます。
日本人の肺がんにおいては、腺がんが最も多いです。
肺がんの原因について
皆さまもご存じのとおりタバコは肺がん発症に強く関わっており、肺がんの原因の約70%は喫煙によるものと言われています。また、受動喫煙も同様に肺がんの重要な原因と考えられています。その他、アスベストや空気汚染などが肺がんに関連していますが、タバコに比べるとその影響は少ないと考えられています。
禁煙の重要性
タバコには約60種類の発がん物質が含まれています。肺や気管支が繰り返し発がん物質にさらされることにより細胞に遺伝子変異が起こり、この遺伝子変異が積み重なるとがんになります。
生涯喫煙しない人と比べて、喫煙習慣のある人の肺がん発症リスクは10~30倍高いと言われています(1)。
また、受動喫煙の肺がん発症リスクは約2倍と報告されており、ご本人のみならずご家族や周りの方々の肺がん発症リスクを下げる意味でも、禁煙は非常に重要です(2)。
肺がんの症状
肺がんに特徴的な症状はありませんが、進行すると呼吸困難、血痰、咳などの呼吸器症状や、だるさ、体重減少、胸痛などを引き起こします。
しかしながら、早期の肺がんの場合は無症状である事がほとんどです。そのため、肺がんの早期発見のためには後述するような定期的な検診が必要となります。
肺がんの検査
肺がんを診断するためには、①胸部レントゲン・胸部CTなどによる画像検査、②気管支鏡検査・外科手術などによる組織学的検査が必須となります。
また、肺がんの進行度(ステージ)や活動性を判断するために、採血検査や全身の画像検査を行う必要があります。
肺がんの治療
ステージに応じて、外科手術、化学療法(抗がん剤)、免疫療法、放射線治療などが行われます。ここでは治療の詳細は割愛しますが、根治的な治療が望める状態であれば、一般的には外科手術が選択されます。
肺がん検診の重要性
肺がんを根治させるには、早期発見・早期治療が重要です。日本においては、年1回の胸部レントゲン検査(喀痰細胞診を含む)が推奨されています。日本におけるこれまでの研究結果では、肺がん検診によって約30~60%の肺がん死亡率減少が示されています。
*長期の喫煙歴のあるハイリスクの方には胸部CT検査もご提案しております(胸部CT検査は提携医療機関で行います)。
まとめ
現在の医学で肺がんを完全に予防する方法はありませんが、肺がん発症リスクをなるべく減らすことや、早期発見により根治を目指すことはできます。ご自身やご家族の肺がん発症リスクを減らすために禁煙は非常に重要ですので、ご自身で禁煙する自信が無い方は禁煙外来受診をご検討ください。
また、検診により全ての肺がんを見つけることができるわけではありませんが、なるべく早期に肺がんを発見するため、肺がん検診を年1回は受診するようにしましょう。
(1)Clin Chest Med. 1991;12(4):669.
(2)Int J Cancer. 2014;135(8):1918.