気管支喘息なら長浜市のみよし呼吸器クリニック

疾患・治療法について

DISEASE

長浜市 みよし呼吸器クリニックの主な対応疾患やお役立ち情報などを分かりやすく解説します。

気管支喘息

気管支喘息とは

気道(空気の通り道)に持続的な炎症(肌荒れのような状態)が起きることで、タバコの煙や冷気など色々な刺激に敏感に反応し、発作的に気道が狭くなる病気です。適切な治療や生活習慣によって、気道の炎症をコントロールすることが喘息治療の中心となります。

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気管支喘息の発症年齢や経過について

  • 子供の時の喘息が思春期までに治った方でも、約30%は大人になってから再発する
  • 大人になって初めて喘息を発症する方は、40~60歳代に多い

小児喘息

2~3歳までに60~70%が、6歳までに80%以上が発症します。その後、思春期になると喘息症状が無くなる方もおられますが、約30%が成人喘息に移行します。一方、症状が無くなった小児喘息の方の中でも、30%弱が成人になって再発するといわれています(1,2)。

成人喘息

小児期に喘息がなく、成人になって初めて症状が出る成人発症喘息は、成人喘息全体の70~80%を占めると言われています。そのうち40~60歳代の発症が 60%以上を占めます(1,2)。

気管支喘息の症状

  • 咳、喘鳴(ぜーぜー、ひゅーひゅー)、息苦しさ、痰、胸の圧迫感
  • 夜間・就寝中や朝方に症状が出やすい
  • 感染症(風邪、インフルエンザ)、ホコリ(ハウスダスト)、花粉、冷気、天候・季節の変化、においなどで症状が悪化する

喘息の方の気道は症状が無い状態でも、多かれ少なかれ持続的な炎症が起きています。そのため、気道の炎症を抑える薬(後述する吸入ステロイド薬や気管支拡張薬)に加えて、ご自身の喘息を悪化させる原因を知ることも非常に大切です。

気管支喘息を悪化させる原因について

  • 感染症(風邪、インフルエンザ、新型コロナなど)
  • 天候・気温・湿度の変化(寒さ、雨など)
  • アレルギー(花粉、ダニ、ペット)
  • 大気汚染(黄砂、PM2.5など)
  • 煙(タバコ、線香、花火など)
  • におい(香水、柔軟剤、漂白剤など)や刺激物(ミント、歯磨き粉など)
  • ストレス、過労、激しい感情変化
  • 運動
  • 飲酒
  • 生理、妊娠
  • 薬(アスピリンなどの解熱鎮痛薬)

このように、様々なことが原因で喘息症状は悪化してしまいますので、これらの悪化原因に気を付けながら適切な治療を行い、気道の炎症をコントロールすることが重要です。

気管支喘息のタイプついて

以前から、喘息は単一の病気ではなく様々な要素が関わっている症候群と考えられてきました。喘息と関連する代表的なものとしては、運動により喘息症状が悪化する「運動誘発喘息」、肥満により喘息症状が悪化する「肥満喘息」、妊娠中に喘息症状が悪化する「妊娠喘息」、アスピリンなどの解熱鎮痛薬が関連する「アスピリン喘息」、仕事で使う化学物質などが関連する「職業性喘息」などがあります。
これら様々なタイプの喘息にあわせて、呼吸器科専門医は適切な治療薬を選択しています。ここでは、喘息治療を行う上で、特に代表的な概念について解説します。

アトピー型喘息と非アトピー型喘息について

喘息はアレルギー物質がはっきりしている「アトピー型」、明らかなアレルギー物質を認めない「非アトピー型」に大きく分かれます。小児喘息では70~90%が「アトピー型」であり、成人喘息では約半数が「アトピー型」と報告されています(3)。
「アトピー型喘息」の場合は、特定のアレルギー物質により喘息発作が引き起こされる可能性があります。代表的なものとして、ダニやスギ花粉によるアレルギーがあり、後述する舌下免疫療法を行うことで喘息症状をコントロールしやすくなります。当院では、問診や血液検査によりアトピー体質の判断を行います。
※アトピー体質:ダニ、花粉、カビ、ペットなどの特定の環境物質に過敏な体質のこと。アレルギー性鼻炎・結膜炎などの発症にも関連します。

好酸球性喘息と非好酸球性喘息について

喘息の大きな原因は気道の持続的な炎症であると上述しましたが、具体的には白血球の一種である「好酸球」が気道炎症に大きく関わっています。多くの方は、好酸球が大きく関与する「好酸球性喘息」ですが、中には好酸球の関与が少ない「非好酸球性喘息」の方もおられます。当院では、様々な検査により「好酸球性喘息」の有無を判断し、患者さまにあわせた適切な治療を提案致します。

気管支喘息の診断と検査

咳、喘鳴、息苦しさなどは喘息以外の呼吸器疾患・心疾患でも起こりえますので、まずはそれらの病気(肺癌、肺炎、心不全など)を除外する必要があります。具体的には、胸部レントゲン検査採血検査などを行い、他疾患を除外します。
また、喘息は気道が狭くなる事が特徴の一つですので、呼吸機能検査により気道や肺の状態を確認します。
前述の、「アトピー性喘息」や「好酸球性喘息」の有無に関しては、採血検査や呼気一酸化窒素測定検査により判断します。

気管支喘息の長期管理目標と治療

喘息は「持続的な気道炎症」により「発作的に気道が狭くなる」病気ですが、喘息のコントロールの悪い状態が続くと、気道の壁が次第に分厚くなってしまい、発作が起きていない状態でも気道が狭く・固くなってしまいます。このことを、「気道リモデリング」と呼びます。

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気道リモデリングが進むと喘息が重症化しやすくなり、あらゆる治療薬が効きにくくなります。また、気道が狭く・固くなってしまうため、呼吸機能の悪化を招き、日常生活に支障が出やすくなってしまいます。
つまり、喘息診療においては、現在だけでなく将来のリスクも見越した治療戦略が不可欠と言えます。世界や日本の喘息ガイドラインでは、それらを考慮した「喘息の長期管理目標」が、以下の通り定められています。

  • 症状を良好にコントロールし、日常生活に支障を及ぼさない状態を保つ事
  • 将来の喘息死・喘息発作、呼吸機能の低下、薬の副作用のリスクを最小限にする事

これらの長期管理目標を達成するため、当院ではガイドラインに準じた以下の通りの治療を行っていきます。

吸入ステロイド薬

喘息の治療で最も重要な薬です。ステロイドという炎症をおさえる薬を吸入することで、気道の炎症をコントロールします。
喘息治療に用いる吸入ステロイド薬は主に気道に作用し、全身への影響は少ないとされていますが、吸入後に「うがい」をすることで口の中や喉に付着したステロイドを取り除き、カンジダというカビの発生を予防することが必要です。

気管支拡張薬

気道の筋肉に働きかけて、気道を広げる作用をもった薬です。作用の違いにより、β2刺激薬と抗コリン薬という2種類の薬があります。上述した喘息のタイプに応じて、それぞれの気管支拡張薬を使い分けます。抗コリン薬は閉塞性隅角緑内障、前立腺肥大症のある方にはそれらを悪化させる可能性があり、原則使用しない事とされています。

抗アレルギー薬

アレルギー性鼻炎などアレルギー体質のある方には、抗アレルギー薬の内服薬を追加する事があります。

舌下免疫療法

アトピー型喘息の方で、上記治療薬に加えて使用することがあります。喘息発作のリスク低下や呼吸機能の改善効果があるとされています(4)。

生物学的製剤

高用量の吸入ステロイド薬に加え、気管支拡張薬や抗アレルギー薬などを使用しているにも関わらず、喘息のコントロールが悪い場合に使用する抗体薬です。
定期的(2~8週間おき)に皮下注射することで効果を発揮します。
以下の5種類が保険適応となっています

  • ゾレア(抗IgE抗体)
  • ヌーカラ(抗IL-5抗体)
  • ファセンラ(抗IL-5R抗体)
  • デュピクセント(抗IL-4/13R抗体)
  • テゼスパイア(抗TSLP抗体)

喘息のタイプ(アトピー型や好酸球性喘息)や合併する病気により、治療薬を決定します。月々の薬価が高額なため、高額療養費制度を用いる場合が多いです。

体調管理、生活習慣や室内環境の改善

上記の薬による治療を適切に行っていたとしても、体調・生活習慣・室内環境によっては喘息が悪化してしまう事があります。悪化のきっかけとなるような以下のことに気を付けることも非常に大切です。

  • こまめな手洗い、うがいを行い感染症(風邪やインフルエンザなど)の予防に努める
  • 禁煙、受動喫煙を避ける ※当院では禁煙外来を行っており、禁煙をサポート致します
  • ダニ、かびなど原因となるアレルギー物質を除去するため、こまめな掃除を行う
  • 花粉の飛散が強い時期には、帰宅後なるべくすぐにシャワーを浴び、部屋着に着替える
  • 過労やストレスをため込まないよう、できるだけ睡眠時間を確保し規則正しい生活を心がける

吸入器について

吸入ステロイド薬や気管支拡張薬にはさまざまな種類の吸入器があります。
当院では主に以下の2種類の吸入器のうちいずれかを、その方にあわせて処方しています。

粉タイプ】エリプタ吸入器

粉状の薬が吸入器に充填されており、ご自身の吸い込む力で薬を吸入します。

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【吸入方法】

  1. 吸入前に息を吐く
  2. 勢いよく吸い込む
  3. 3秒程度息止めをしてから、息を吐きだす(気道に薬を沈着させるため)

【メリット】

  • 1日1回1吸入で済むため、吸入忘れが起きにくい(最大のメリット)
  • 「カバーを開ける⇒吸入⇒カバーを閉じる」の3ステップで操作が簡単である
  • 吸入回数のカウンターがついているため、残量が一目でわかる
  • 吸入ステロイド薬や気管支拡張薬の量の調整が容易

【デメリット】

  • 吸入する力が弱い小さなお子様やご高齢の方では、うまく吸入できないことがある
  • 声がかすれることがある

日本喘息学会のHPで吸入方法が公開されています。

【霧タイプ】加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)

吸入器を押しガスの圧力で霧状の薬剤(エアゾール)を出すことで、薬を吸入します

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【吸入方法】

  1. 容器をよく振る(薬を混ぜるため)
  2. 吸入前に息を吐く
  3. 吸入器を押すと同時に、深くゆっくり吸い込む
  4. 3~5秒程度息止めをしてから、息を吐きだす(気道に薬を沈着させるため)

【メリット】

  • 吸入する力の弱い小さなお子様やご高齢の方でも吸入できる
  • 声がかすれにくい

【デメリット】

  • 薬の噴射と吸入するタイミングを合わせる必要があり、うまく薬を吸えないことがある(そのような場合は専用の吸入補助具であるスペーサーの使用をお勧めいたします)
  • 1日2回(朝・夕)、1回1~4吸入と吸入回数が多くなりやすい

こちらも、日本喘息学会のHPで吸入方法が公開されています。

https://jasweb.or.jp/movie_01A.html
https://jasweb.or.jp/movie_01B.htm
(マウスピースタイプのスペーサー)
https://jasweb.or.jp/movie_01E.html(マスクタイプのスペーサー【小児用】)

まとめ

気管支喘息は様々な要因が複雑に絡み合っており、その治療も日進月歩で進んでいます。当院では最新の研究結果に基づいた喘息診療を患者さまに提供していきたいと思っています。
また、治療薬と同じくらいにとても大切なことがあります。それは「決められた時間に決められた薬をしっかり吸入(服用)する事」です。喘息患者さまにとっては、生活習慣・天候・感染症など気を付けなければならない事が沢山あるかと思います。また、忙しい現代においては薬の吸入(服用)を忘れてしまう事も多々あるかと思いますが、当院では治療薬の規則正しい吸入こそが喘息治療の根幹と考えています。
患者さまそれぞれのライフスタイルに合わせた喘息治療を提案していきますので、お気軽にご相談ください。

(1)日胸疾会雑誌 29:984-991, 1991
(2)アレルギー 59:37-46, 2010
(3)Clin Med (Lond) 2011;11(4):376-380.
(4)JAMA. 2016 Apr 26;315(16):1715-25.

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